森林によるCO2の認証制度が持つ可能性(1) 

先進的な成果と現状の壁
当法人の主要な事業のひとつである「森林によるC02吸収認証」に関して、ここまでの動きの整理します。
カーボンシンクが策定と運営を担ったkikito(湖東地域材循環システム協議会)の森林CO2吸収認証制度は、2009年度に「びわ湖環境ビジネスメッセ」の電力使用によるCO2を、東近江の森林吸収でオフセットしました。さらに、2010年度は、栗東市商工会との協働により、商工会員企業の小口出資に対する「吸収協力証」の発行で、多数による協賛金参加方式を生み出しました。
全国的には、イベント等のオフセットに用いるクレジットは、国連が認めるCERやグリーン電力証書を使うことが多く、kikitoの取り組みは、非常に先進的です。特に、協賛金参加方式は、おそらく前例はなく、商工会に限らず、組合やNPOなど、会員制の組織に道を開きました。
一方で、商品やサービスへのカーボンオフセットクレジットとして活用するには、更に、制度運営等に関して、kikitoの専門委員会での協議が必要です。J-VERという、いわば、国のお墨付きクレジットが登場した以上、活用の幅が狭いkikitoの証書は、現状では、企業CSRとして活用に留まらざるを得ません。


左:CO2吸収証書
右:CO2吸収協力証

 

(2) J-VER取得はコスト面で困難か
上述した状況にもかかわらず、現状では、kikito証書を、J-VER化する話は出ていません。確かに、そうなれば証書を利用する企業は増えるでしょうが、一方で、取得と運営に多額の費用が必要になるからでしょう。
J-VERは、国内で生まれた“CO2削減や吸収”を、どこでも取引可能なクレジットとする仕組みです。国内外のどこでも同じ価値をもち、高い信頼性に支えられ、市場交換を前提とします。
国内におけるCO2削減や吸収の取り組みを支援するために生まれた、重要な制度ですが、クレジット化のコストが大きく、一定規模の取引でなければ、採算が合わないことが難点です。目に見えないCO2を、様々な手続きを経て、森を育てた空気や土や水、木を運んだ人たちと切り離した「価値」にするには手間がかかるのです。

(3) 栗東市商工会による協力証の活用
会員企業への協力証発行で、協賛金方式によるパタンを生みだした栗東市商工会は、kikito証書がもつ可能性を生かし、更なる事業展開を進めています。商工会のプロジェクトである「フォレスト倶楽部」が開発する栗菓子に「協力証の写し」を添付するというものです。
会員企業が「みやげ」として持参する「菓子」に、購入者である会員企業の負担で、一定料金を上乗せするという仕組みです。例えば、1000円の栗菓子を環境付加価値つき商品として、1,200円で購入し、差額200円を「フォレスト倶楽部」の協賛金として、商工会の森林整備会計に組み込むのです。
購入者ごとに差額分を管理し、それに応じた協力証を、森林整理後に提供するのは、さすがに困難ですから、菓子には、見本としての「協力証の写し」が添付されるだけですが、金額分は、確実にCO2が吸収されます。
もちろん、カーボンオフセット商品というわけでもありませんが、菓子を持参した企業は、差額分を取り扱いなどを、自社の環境貢献としてアピールできます。
商工会では、この取り組みを会員企業すべてに広げるべく、説明チラシと添付しおりを作成し、本年5月の総会に菓子を配布する予定です。今後の展開が非常に楽しみです。

栗東フォレスト倶楽部栗菓子

「栗菓子の特徴」
〇 上乗せ分を、商工会の「森林整備会計」に加える。
〇 夢の森づくり事業のCO2森林吸収認証の「制度概要資料」を添える。
〇 webで寄付への感謝と整備状況報告を行う。

(写真)吸収認証 現地調査
(写真)栗東フォレスト倶楽部ロゴマーク